大変、お久しぶりの更新となります。
今回はEMDRについてです。
SNSなどで話題になっているためか、EMDRについてのお問い合わせが増えております。
まず、EMDRについて説明をします。
EMDR(Eye Movement Desensitization and Reprocessing:眼球運動による脱感作と再処理法)は、PTSD(心的外傷後ストレス障害)に対して、エビデンスのある心理療法です。さらに、他の精神科疾患、精神衛生の問題、身体的症状の治療にも、学術雑誌などに成功例がしっかり記述されています。
PTSDの治療法として開発されて、今ではトラウマ性疾患だけではなく恐怖症などの治療に応用されています。
日本EMDR学会のHPにも記載されていますが、適応的情報処理というモデルに基づいた治療法です。特徴的なのは眼球の左右運動によって脱感作、再処理をするというところです。
これはどういうことかというと、
適応的情報処理モデルというのは、何らかの負の経験や記憶がうまく整理されなかったり、間違った整理の仕方をされたことが多くの精神疾患やこころの不調の原因になっているという考え方です。なので、嫌な経験や苦痛や恐怖などの出来事に伴う記憶や認知をきちんと整理し直すことによって、回復すると考えられます。
EMDRの基本は目を左右に動かすことによって効果が現れるというものです。
なぜ眼球を左右に動かすとPTSDに効果があるのかという科学的な解明はまだ全貌は明らかになっていませんが、どうやらヒントは夢、レム睡眠にありそうだと言われています。
最近の研究では左右の眼球運動(または両側交互刺激)が脳の特定部位に対して影響することが分かりつつあります。
脱感作とは、近頃はアレルギーの治療などでの聞くようになりましたが、「何らかの刺激に対して過敏をその刺激に慣らしていくことで過敏さを軽減させること」です。
例えば非常に単純な例を出しますと「小さい時に犬に噛まれて犬が怖い」場合に少しずつ犬に慣れさせて犬が怖く無くなるようにするというようなメカニズムを指します。
脱感作を行うということは必然的に苦痛を伴います。フラッシュバックを引き起こす可能性が高いからです。したがって、EMDRを行うためには入念な下準備が必要です。
EMDRは確かにトラウマに効果がありますが、効果が高い分副作用的な面も大きいのです。
EMDRの中でも簡易版で安全性の高いTSプロコトルという方法も開発されました。
TSプロコトル自体はフラッシュバックを軽減させる目的のメソッドです。
そのほかにもトラウマに効果のある方法はいくつかありますので、それらを組み合わせてカウンセリングを進めていきます。
まずはしっかりとお話を聞かせてもらってから、方針をクライアントさんと一緒に決めていく作業から始めた方が安全と言えるでしょう。
pazではトラウマカウンセリングに際してこのような流れで行なっております。
EMDRをご希望される方は参考になさってください。
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